人はなぜマラソンを走るのか(後編)

女子マラソンの隆盛

世界中をハラハラさせたあとで、ようやく……本当にようやくアンデルセンはゴールにたどり着いた。タイムは2時間48分42秒で37位だった。残りの2・195キロメートルに17分もかかっていた。それは、誰よりも精根尽き果てた17分であった。

女子マラソンが正式に五輪種目になった日は、メモリアルな一日となった。手術を乗り越えた不屈のランナーが優勝を飾り、オリンピックにふさわしい敢闘精神をもった不倒のランナーが世界中に感動を与えた。

「女にマラソンは無理だ」

そういう男性側の声に押されて、女性は長くマラソン競技から除外されてきた。だが、実際に正式種目になってみると、マラソンが忍耐力のある女性にいかに向いたスポーツであるかが徐々にわかってきた。今では、マラソンは男女の力量差が最も小さい競技の一つになっている。

1980年代の日本マラソン界は、瀬古、宗兄弟、中山という個性豊かな逸材が登場して、世界でもトップレベルの力量を示した。1980年モスクワ五輪の大会ボイコットや1984年ロス五輪での猛暑対策の失敗によってメダルには縁がなかったが、その勢いは谷口や森下によって受け継がれ、1991年世界選手権での金メダル、1992年バルセロナ五輪での銀メダルに結びついた。だが、その後は息切れしたかのような低迷が続いてしまった。(ページ4に続く)

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記事「トンイは張禧嬪(チャン・ヒビン)より悪女なのか?」

ドラマ『トンイ』は日本でも大人気を博した。トンイを演じたハン・ヒョジュの魅力もあって、トンイがいかにも明るくて純粋な女性のように描かれていた。一方の張禧嬪は、朝鮮王朝3大悪女の1人に数えられて、悪女の代名詞になっている。しかし、本当の悪女はどちらだったのだろうか。史実を見ていくと、トンイの別の顔が見えてくる。

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