愛と別れの恋愛博物館〔第3回〕

バルコニーは歓声で揺れて

正午過ぎ、新婚ほやほやの皇太子夫妻がセントポール寺院の外に姿を見せると、ロンドン中の教会の鐘が鳴り響いた。世界一豪華なウェディング・ベルが鳴り響く中、絢爛豪華な馬車の列がバッキンガム宮殿に向かった。式に向かうときは別々の馬車だったが、今度は一緒の馬車に仲むつまじく座っている。

沿道の警備も厳重をきわめた。その1カ月半前、エリザベス女王誕生日祝賀パレードの最中、馬上の女王に向かって過激派が6発の空砲を浴びせる事件が起こったばかりだったので、ロンドン警視庁も1万人の警官を動員していた。しかし、“世紀のロイヤル・ウェディング”を妨害する無粋な過激派は1人もいなかった。実際、1万人の警備陣が逮捕したのは、けちなスリが1人だけだった。

2人がバッキンガム宮殿に入ってからほどなくして、王室が勢揃いしてバルコニーに現れた。宮殿前広場に集まっていた25万人の観衆が歓喜の声をあげた。

その観衆に応えたあと、いったんはバルコニーから姿を消したが、観衆のアンコールを受けて再び登場。そして、三度目にバルコニーに立ったときだった。

皇太子の弟のアンドルー王子が兄に向かって言った。

「2人のキスを見ないと、誰もおさまらないよ」

思わず顔を見合わせてニコリと微笑む2人。それから、チャールズ皇太子はエリザベス女王に尋ねた。

「キスしてもいいでしょうか」

エリザベス女王の答は明快だった。

「もちろんよ」

その声に勇気づけられて、2人は延々とロイヤル・キスを披露した。観衆の熱狂は頂点に達した。

これまで、バルコニーにはさまざまな王族が立ったが、大衆の面前でキスをしたのは、皇太子夫妻が初めてだった。

この日の模様は、全世界に中継され、7億5000万人の人々が釘づけになっていた。これだけ多くの人が目のあたりにした「キス」は史上初めてである。

〔その後〕

ダイアナ・フィーバーは世界中を席巻した。私生活でもウィリアム

、ヘンリーの2人の王子に恵まれて夫婦円満と思われていたが、実情

は違っていて1996年に離婚。ダイアナ妃は翌年、パリでの交通事

故で亡くなった。

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