死罪の方法もこんなに違う

 

江戸時代に士農工商の最上位にいた武士が死罪を命じられたとき、名誉ある死に方は切腹だった。腹を切り刻むわけなので、とてもむごいことなのだが、それが武士にとっては誇りを保てる死に方だった。一方の朝鮮王朝は、どうだったのだろうか。




賜薬と呼ばれた

1392年から1910年まで続いた朝鮮王朝。その時代に、高貴なお方が死罪を命じられたときは、毒薬を呑んで絶命するのが名誉ある死に方だった。
毒薬は国王が賜る形を取るので、その死罪のことは「賜薬(サヤク)」と呼ばれた。毒薬の中身は砒素とトリカブトだった。
韓国時代劇を見ていると、毒薬を呑んだ高貴なお方がアッという間に息絶えるが、実際にそんな即効性はなかった。
呑んだ人は5時間くらい苦しんでから死ぬのが当たり前で、中には一晩中も悶々と苦しんだ人もいたという。確かに、名誉ある死に方なのだが、肉体的にも精神的にもむごい方法だったのである。
朝鮮王朝ではなぜ高貴なお方は毒を仰いで死んだのか。
毒を仰いで死んだのは、身体を傷つけないためであった。
朝鮮王朝では儒教を国教にしていて、その思想が国土の隅々まで浸透していた。その儒教の最高の徳目は「孝」である。親孝行こそが一番大切であると信じられた社会では、親にもらった身体を傷つけるのは、親不孝の最たることであった。




そういう事情があって、たとえ死罪になっても身分が高い人たちは身体を傷つけずに死んでいったのである。
江戸時代の切腹と、朝鮮王朝時代の賜薬。同じ時代でも、日本と朝鮮半島では身分が高い人の死罪の方法が対照的であった。
時代が下って、現代の韓国はどうか。
まったく逆のことが起きている。美容整形のことだ。親にもらった身体の一部(主に顔)にメスを入れる人がいる。
ただ、それは親も承知のうえだ。
むしろ、親が高校を卒業した娘に勧めるケースもある。「娘の将来を考えると、そのほうがいい」と判断して親が費用まで出す場合があるのだ。こうなると、美容整形をしたほうが親孝行ということになる。
親孝行の形は、朝鮮王朝時代と現代韓国では極端に変わったと言える。

文=康 熙奉(カン ヒボン)

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