危篤になる前のイ・サン(正祖〔チョンジョ〕)は何を語ったか

 

1800年6月、正祖の体調が悪化した。それでも彼は、薬を調合する現場を自ら視察している。彼自身が薬について詳しかったこともあるが、おそらく毒殺されることを極度に警戒していたものと思われる。

 




医官を信用しない正祖

6月21日に正祖が苦痛を明らかにした。
「痛みがあって苦しい。熱があるのに寒けもする。意識も朦朧(もうろう)とするときがあって、夢を見ているのか目覚めているのか、まるでわからない」
内医院(ネウィウォン/王族を診察する医院)の高官だった李時秀(イ・シス)が言った。
「腫れ物の患部を診察すれば処方について話し合えるのですが、医官たちがみんな診察できないと申しております。その者たちがいつも診察できるようにされるのがよろしいかと存じますが……」
李時秀がこう言ったのは、正祖が患部を医官に見せなかったからだ。正祖は医官たちを信用していなかった。
6月27日、李時秀が正祖に聞いた。




「昨日の夕方、殿下を診察しましたが、まるで眠っていらっしゃるように朦朧とされていましたが、今も同じですか。夜もずっとそういう状態だったのでしょうか」
すると正祖は「夜が明けるまでのことをこまごまと話すのは難しい」と言った。
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