ライバル対決の終わり
ドラマの展開上は、張禧嬪がトンイにぶざまに屈伏する形になった。それを象徴するのが、張禧嬪がトンイの服のすそをつかみながら「せめて世子だけは守って」と懇願する場面だった。
史実ではありえない話だ。
しかし、ドラマではここが見せどころになっている。
「自尊心が強くて高慢で嫉妬深い女性が、謙虚で思いやりがあって明るい女性をとことんいじめ抜くが、最後の最後になって自分の負けがわかるとぶざまにひざまずく」
このように立場が逆転する展開は、現代劇でも時代劇でも、「ドラマの王道」と言ってもいい。
その王道に忠実に『トンイ』は制作され、張禧嬪の最期をもって2人のライバル対決は終わったのである。
歴史書に残る史実では、張禧嬪が死罪になる前に淑嬪・崔氏に会った形跡はまったくないのだが……。
文=康 熙奉(カン ヒボン)
朝鮮王朝最高のシンデレラは女官から王妃になった張禧嬪(チャン・ヒビン)