息子の成長/誰かが読んでくれる物語1

 

父親は息子が生まれた時、あまりにうれしくて、二階から落ちそうになった。人生最高の感激だったと言ってもいい。小学校に入った時も大いに期待した。しかし、息子の成績は良くなかった。




才能はすでに育っていた

徐々に失望した父親は、息子がやることを見て、否定的に意見を言うことが多くなった。息子が何をやっても、「それはダメだ。もっとこうしろ」と言うばかりで、息子は徐々に自分から積極的に何かをしようと思わなくなった。
そんなことがずっと続いた。
父親は息子を自分の枠にはめたがり、息子の持つ才能や優しさを理解できなかった。
息子が大学を卒業して就職に失敗し、家でブラブラしているとき、父親は息子を自分の会社に入れた。父親は小さな編集プロダクションを一人で経営していて、行く場所がない息子もそこで執筆の修業に励まざるをえなくなった。
5年が経った。当時、父親の会社は映画やドラマに関するサイトを作っていた。そこで主な書き手になっていたのが父親で、息子は何を書いても父親からダメだしをされた。サイトに自分の記事が載ったときも文章の大半は父親の指図に従ったものだった。
自由に書けない息子。ストレスが溜まる一方だった。




そんな最中に父親が倒れた。一時は意識不明で予断を許さなかったが、一命をとりとめ、3週間で退院することができた。
その間、父親はサイトの運営をあきらめていた。息子一人では、何もできないだろうとタカをくくっていたのだ。
しかし、職場に復帰した父親が3週間ぶりにパソコンを開いてサイトを見た時、そこには信じられない画面が映っていた。当然、自分が入院中に休止になっていると思ったサイトは無事に運営されていて、新しい記事がたくさん掲載されていた。
しかも、その記事の出来がすこぶる良かった。執筆者を見ると、すべて息子の名前が載っていた。
「お前がみんな書いたのか。なぜ、ここまでできたの?」
驚く父親に息子が言った。
「今までは自由に書けなかったけど、今度は一人だけでやらなければならなくなったでしょ。怖かったけれど、自分で必死に書いたら、こうなったの。大丈夫かな」
父親は心から感心した。




「大丈夫どころか、若い人の感性が生きていて、どれもいい原稿だよ」
そう言ったとき、父親はようやくわかった。
常に息子を否定的に捉えていた自分の愚かさを。
そして、いかに自分の固定観念が息子の成長を妨げていたかを。
父親は号泣しながら息子に詫びた。
そのときに微笑んでくれた息子の対応に、父親は心から救われた。

文=康 熙奉(カン・ヒボン)

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