韓国人の死生観
「自分は何度目の人生を歩んでいる?」と自問自答していると、やたらと気になるのが、イ・ドンウクが演じる死神の存在だ。
この死神は、死にゆく人を天界に導く役割を持っているが、深刻な様子はまったくなく、道で出会った女性に一目惚れするような人間くさい一面を持っている。
そんな死神がキム・シンと同居することで、物語は重層的な展開を見せていく。
韓国人の死生観は歴史的に「人が死ねば魂は空に上がり、肉体は地に還(かえ)る」というものだった。そして、その魂はときおり地上に戻ってくるので、子孫は祭祀を行なって先祖を迎えた。
このように、たとえ死んでも魂は不滅なのである。
そうした死生観を巧みなストーリーと美しい映像で描いたのが、ドラマ『トッケビ』の本質だった。
韓国で絶大な人気を集めたのも、相応の理由があったのである。
文=康 熙奉(カン ヒボン)
康 熙奉(カン ヒボン)
1954年東京生まれ。在日韓国人二世。韓国の歴史・文化と、韓流および日韓関係を描いた著作が多い。特に、朝鮮王朝の読み物シリーズはベストセラーとなった。主な著書は、『知れば知るほど面白い朝鮮王朝の歴史と人物』『朝鮮王朝の歴史はなぜこんなに面白いのか』『日本のコリアをゆく』『徳川幕府はなぜ朝鮮王朝と蜜月を築けたのか』『悪女たちの朝鮮王朝』『宿命の日韓二千年史』『韓流スターと兵役』など。最新刊は『いまの韓国時代劇を楽しむための朝鮮王朝の人物と歴史』。