不幸な時期
王妃は「国母(クンモ)」と呼ばれ、朝鮮王朝の筆頭の女性だった。現在で言う「ファーストレディ」である。
一方、王妃が産んだ王子が即位すると、その時点で王の母になるので、「大妃(テビ)」と呼ばれた。
朝鮮王朝時代は儒教が国教となっており、儒教は「孝」を最高の徳目と考えたので、王族の最長老になる大妃の力は絶対だった。
王が元気に執政をしていれば、政治的に大妃の出番はなかった。
しかし、王が急死して幼い王子が即位したときには、いよいよ大妃の出番となった。王が未成年の間は、大妃が代理聴政(摂政)を行なうことが多かったからだ。
こういうときにかぎって、政治が大いに乱れた。
なぜなら、大妃が一族の仲間を重用して側近政治で王朝を牛耳り、賄賂が横行したからである。
「大妃が実権を握ると政治が乱れる」
この事実が朝鮮王朝時代の悪弊になっていた。
まさに、『オクニョ 運命の女(ひと)』で描かれた時代も、大妃となった文定(ムンジョン)王后が露骨に側近政治を行なって、悪政がはびこっていた。そういう意味では、朝鮮王朝にとって不幸な時期だったのである。
文=康 熙奉(カン ヒボン)
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