日本と韓国の物語「第7回/李秀賢(前編)」

「義人」と報道した韓国の新聞

両親は、告別式のあとに新大久保駅を訪れた。李盛大さんが遺骨を抱き、辛閠賛さんが遺影を持っていた。
線路をのぞきこみながら号泣する辛閠賛さん。多くの人が、その姿を見て涙を流した。
亡くなった2人を悼む声が全国に広がった。
とりわけ、日本に語学留学に来ていた韓国人が、日本人を助けようとして命を落としたことがメディアでも大々的に取り上げられた。
李秀賢さんの死は、本国の韓国でも大きく報道された。新聞には「義人」という大見出しが多かった。
金大中(キム・デジュン)大統領は1月29日、「崇高な犠牲精神は韓日国民の心の中に永遠に記憶されます」と語り、韓国政府は李秀賢さんに国民勲章を授与することを決めた。
日本政府も閣議決定により、関根史郎さんと李秀賢さんに賜杯を授与した。




李秀賢さんの遺骨は1月30に故郷の釜山に帰った。その前に、両親は関根史郎さんの母親に電話を掛けてお悔やみを述べた。
母親も、「若い息子さんを亡くして悲しみが深いでしょうに……。外国人が日本人を助けたのだから立派だと思います」と涙ながらに応じた。
(中編に続く)

文=康 熙奉(カン ヒボン)

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