「希望を見つけられるドラマ」マイ・ディア・ミスター名作物語11

 

『マイ・ディア・ミスター~私のおじさん』に大いに感動している人は多いと思う。本当に、内容的に凄い作品である。この中で、主役を担っているのは、イ・ソンギュンとIU(アイユー)である。




ラブストーリーではない

タイトルから察すると、「このドラマはおじさんと若い女性の禁断的な愛を描いているのかな」と考えてしまう人もいるだろう。事実、私の友人の何人かは、そういうふうに勘違いしてしまったようだ。
なにしろ、韓国のドラマである。それが、警察ドラマでも、時代劇でも、法廷ドラマでも、アクションドラマでも……つまり、100%のドラマがかならず恋愛を主軸に置くのが韓国スタイルなのである。
しかし、『マイ・ディア・ミスター~私のおじさん』は違った。序盤の暗くて重い展開に面食らった視聴者も多いと思いが、このドラマは決しておじさんと若い女性のラブストーリーではない。お互いに好意を寄せていたのは事実だが、ドラマが描こうとしたのはそこではない。究極的にいえば、「自分ではどうしようもなく苦しい境遇に置かれた人たちが周囲の触れ合いの中で勇気づけられて前に踏み出す」というドラマなのである。




それは、見ている人にも大いにあてはまることであろう。だからこそ、次々に出てくる登場人物の苦境に接してみんなが応援したくなったのだ。
そして、IUが演じるジアンは、このドラマの象徴だ。
仮に職場にいたら、本当に嫌な女で、そばにいたくないだろう。
けれど、『マイ・ディア・ミスター~私のおじさん』はジアンの生い立ちから今の生活までを丹念に追っていく。
すると、見えてくる。
ジアンの苦しみは、もしかしたら自分の苦しみなのではないか、と。
彼女は、生い立ちからそう仕向けられてきた。立場を変えれば、誰もがそうならざるをえない状況があった。
それに、いちはやく気づいたのが、イ・ソンギュンが演じるドンフンだった。
彼もドラマの序盤では死んだような目をしていた。
そんな彼だから、「同類」としてジアンの悲しみが少しは理解できた。
そして、社内のみんなが毛嫌いするジアンのことを「いい子」だと悟るようになった。




ここから、ドラマに明るい陽射しが少しさしてきた。
まさに、『マイ・ディア・ミスター~私のおじさん』はドンフンとジアンが諦めていた希望を見つけられるドラマだった。

文=康 熙奉(カン・ヒボン)

「いかにも韓国らしい作品」マイ・ディア・ミスター名作物語1

「『スリル』と『ほのぼの』が同居した多様性ドラマ」マイ・ディア・ミスター名作物語2

「三兄弟の長男が本当にいいキャラだ」マイ・ディア・ミスター名作物語12

注目記事のエッセンス1

記事「トンイは張禧嬪(チャン・ヒビン)より悪女なのか?」

ドラマ『トンイ』は日本でも大人気を博した。トンイを演じたハン・ヒョジュの魅力もあって、トンイがいかにも明るくて純粋な女性のように描かれていた。一方の張禧嬪は、朝鮮王朝3大悪女の1人に数えられて、悪女の代名詞になっている。しかし、本当の悪女はどちらだったのだろうか。史実を見ていくと、トンイの別の顔が見えてくる。

ページ上部へ戻る