浅草を気ままに歩く(前編)

誰も見られない絶対秘仏

兄弟もご利益にすがろうと、観世音菩薩に向かって「明日は大漁にしてください」と祈
った。
すると、願い通りに翌日は魚が舟からあふれるほどとれた。
その話はすぐに評判になり、観世音菩薩をお参りする人が増えた。それでできたのが浅草寺である。
こうした縁起が残っているが、注目したいのは兄弟の姓の「檜前」だ。この姓は朝鮮半島からの渡来人にゆかりがある。
実際、奈良の飛鳥に檜前という地名が今もあり、そこは渡来人の里としてよく知られている。
中でも一大勢力だったのが東漢(やまとのあや)氏である。元来は朝鮮半島の南部から五世紀頃に日本にやってきた一族だと言われている。
やがて、東漢氏は大和朝廷の中で大きな力を持ち、末裔には征夷大将軍となった坂上田村麻呂もいる。
この東漢氏には仏教を信仰する人が多かった。
仮に檜前兄弟が東漢氏の出身だとすれば、彼らが観世音菩薩を川から引き上げたという縁起も、いかにも理屈が通っている。
ただし、観世音菩薩は絶対秘仏で参拝客は誰も見られない。縁起は伝わっていても、肝心の本尊は闇の中だ。
「一番大切なものは目に見えないんだ」
そう納得するしかない。
(後編に続く)

文=康 熙奉(カン ヒボン)
出典=『東京下町 こんな歩き方も面白い』(康熙奉・緒原宏平著/収穫社発行)

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