女性同士の旅は楽しい。観光地を巡り、いちおう感想を言い合うが、楽しみのひとつは食事だ。神奈川県三浦半島に叔母と娘と私の三人で行った時には、新鮮なマグロがきれいな色で、本当に美味しくて、とても幸せな気分だった。
旅の楽しみは美味しい食事と出会い
もうひとつ、幸せな気分にしてくれた事があった。お料理を運んでくれたお店の方が、赤ちゃんをおんぶしていたのだ。
赤ちゃんは背中で気持ちよさそうに眠っていた。時々、ピクッと動く小さい手と足が可愛かった。
お腹も満腹になり、大満足だ。
次に、私たちは半潜水式の船に乗った。そこでは魚のエサやりも体験できる。私も船頭さんに教わりながらエサをまいた。
すると、船頭さんに「お姉さん、エサやり上手だね~」とほめられた。
「えっ、そうですか~」と、私もその気になり、二回、三回と楽しんだ。
あちこち歩き回って、最後に甘いものが食べたくなり、有名らしいドーナツ屋さんに向かった。
すると、お店にテレビカメラが来ていて、撮影の準備をしていた。夕方のニュースで流すらしい。
お店に並んだ私たちに、「映るかもしれませんが、大丈夫ですか?」と聞いてきた。
娘がよそゆきの声で「大丈夫です」と答えている。
自然と私たち三人は、映るかどうかわからないカメラを意識して、髪を整えたり、それこそよそゆきの表情を作ってしまう。後で笑い話になる。
やっと順番がきて席に着くと、向かいの席にカップルが座った。このカップルがとても素敵で、ご夫婦かしら? 恋人かしら? と気になってしまった。
席を立つとき、ふたりで私たちに会釈をしてくれた。恋人なら応援したくなるほど、素敵な笑顔のふたりだった。
肝心のドーナッツだが、甘さもちょうどよくて、とても美味しかった。娘はぺろりと二つお腹におさめた。
だんだん薄暗くなり、帰りの時間がせまってくると疲れも感じてくる。
帰りの電車ではウトウトしてしまう。
それでも地元に着くとまた元気になる。旅の締めとして、美味しいスパゲッティのお店に入り、一日を振り返った。
さあ、明日からまた頑張ろう! そう思える楽しい旅だった。
文・写真=須坂のりこ(すざかのりこ)
生活エッセイスト。ものづくりの現場に携わり、手芸を中心に多彩に興味を広げており、特にファッション、クラフト、デザインについて発信を続けている。西村玲子さんのエッセイ&イラストが好き。大人の楽しみとは何か、をいつも考えながら暮らしている。