切なくも懐かしいクリスマスの思い出

 

そろそろクリスマスの時期になる。街並みはイルミネーションの準備が始まっている。近くのショッピングモールでも、すでにクリスマスツリーが点灯を待つだけになっている。クリスマスは特別に予定もないのに、なんとなくウキウキする。街中のイルミネーションがそうさせるのだろうか。




今年はどんなクリスマスイブかな

毎年思い出すことがある。
クリスマスの日に仕事から帰ると、母が夕飯の支度をしていた。
そのおかずを見て「チキンが食べたかったなぁ」と言ってしまった。
母は「買ってこようか」と言った。
母にそう言わせてしまった私は、バツが悪くなり「いいよ」とぶっきらぼうに言いながらも「ごめん」と心の中で言っていた。
今でも割烹着を着た母が、湯気のあがる台所にいる姿が浮かぶ。
「いいよ、いいよ。さっ、ご飯にしよう。美味しそう」と優しく言えば良かったなぁ、と悔やむ。
実際、母の煮物は美味しかった。
また、父は小さかった私を、自転車の後ろに乗せて、駅前の角にあった、オモチャ屋さんに連れて行ってくれた。




ひらがなで大きく「ことぶきや」と書かれたお店だった。
子供にとっては夢のようなお店だ。建物の中が全部オモチャなのだから。
私はクマのぬいぐるみを買ってもらった。
帰り道、片方の手で父の洋服をつかみ、もう片方でクマの包みをぶら下げていた。
「あっ!」
包みを自転車の後輪に、巻き込んでしまった。
父は慌てていた。私の足が挟まってしまったと思ったのだろう。
自転車を降り、かがんで確認した私の足が、無事とわかり、ホッとしたに違いない。
クマのぬいぐるみは、と言うと、包装紙が無残にも破けただけで、クマに怪我はなかった。
それからはしっかり抱っこして、自転車に揺られながら帰った。
クリスマスにまつわる思い出を、私は子供たちに残しているだろうか。
子供たちからは楽しい思い出をもらっている。
あるクリスマスイブ、次男の枕元に、靴下が片方だけ丁寧に置かれてあった。




私は困ってしまった。靴下に入りきらないのだ。仕方なくプレゼントの端っこに靴下を置いた。
なんだかとても懐かしい。
今年のクリスマスは、どんな出来事が待っているのだろうか。
みんなで楽しく、美味しい料理とケーキが食べられたら、それだけでも幸せだ。

文・写真=須坂のりこ
生活エッセイスト。ものづくりの現場に携わり、手芸を中心に多彩に興味を広げており、特にファッション、クラフト、デザインについて発信を続けている。西村玲子さんのエッセイ&イラストが好き。大人の楽しみとは何か、をいつも考えながら暮らしている。

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