『愛してるっ!!韓国ドラマ』という雑誌を立ち上げて3号目の編集をしているとき、平山佳代さんが「イ・ジュンギのインタビューを取れますよ」と言ってきた。私は思わず、「イ・ジュンギって誰?」と言ってしまった。
先見の明
2004年8月の話だ。
当時、イ・ジュンギは草なぎ剛主演の『ホテルビーナス』に出演したばかりで、韓国の俳優である彼は日本でほとんど知られていなかった。
そんなイ・ジュンギのインタビューを載せたいと熱心に言ってきた平山さんは、元は『サッカーダイジェスト』の編集者で、フリーになってから韓国にも語学留学をして韓流の記事を書いていた。
あまり気乗りはしなかったが、平山さんの熱心さに応えたいと思い、2ページのスペースを用意した。そして、平山さんがイ・ジュンギのインタビューを取ってきてくれて、無事に掲載することができた。
今、読み返しても、デビュー直後のイ・ジュンギの新鮮な感性がよく出ているインタビューだと思う。
それからしばらくすると、イ・ジュンギは映画『王の男』で大ブレークを果たし、人気俳優の仲間入りを果たした。そうなると、もう簡単にインタビューを取ることもできなくなってしまった。
それだけに、大ブレークする前に単独インタビューを取れたことは幸いだった。
以後も、平山さんには韓流の記事を本当によく書いてもらった。福井県の敦賀の出身で、率直な人柄で温かみがある女性だった。
彼女が病にかかってからはメールをよくもらうようになり、韓流や体調のことなどを意見交換した。
彼女が亡くなったことはすぐには知らなかった。あとからわかり、深い喪失感に包まれた。まだ40代だったのかな。最後に会ったのは、別の雑誌の打ち上げで焼肉屋で同席したときだった。
そのときは元気そうに見えたが、あとで思えば、むくみが出ていたのかもしれない。
平山さんがイ・ジュンギのインタビューをしてから17年が経った。イ・ジュンギは今もトップスターとして活躍し、『悪の花』でもすばらしい演技を披露した。
そんなイ・ジュンギを大ブレークの前に注目していた平山さんは、間違いなく先見の明があった。本当にいい書き手だった。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)