浅草を気ままに歩く(後編)

ゴミ箱ではありません

午前十時が近づいたので、本堂に入った。
参拝所の右側に、本堂の奥に入っていく入口がある。そこに「納札入れ」と書かれたアルミ製の箱があり、中をのぞくとお守りが入っていた。
なるほど、使い終わったお守りを納めるためのものか。
すぐにそうわかるのだが、箱には「ゴミ箱ではありません」と大きく書いてあった。同じ意味のことが韓国語、中国語、英語でも添えられている。
おそらく、間違ってゴミを入れてしまった人も多いのだと思う。むしろ、ゴミ箱に見えるからいけないんじゃないかな。こういう注意書きをする前に、箱の形を変えたほうがいいのでは……。
ちょっと首をかしげていたら、入口にいた係の人がビニール袋を差し出してくれた。その袋に靴を入れて座敷の中に上がっていく。
本堂の奥は広い。中央に真四角に仕切られた祭壇があり、その周りに読経会に参加する人たちが集まっている。
午前十時の段階で数えたら、参列者は百二十人くらいだった。座敷の一番後ろには三十センチくらいの段が突き出ていて、腰を掛けるのにちょうどいい高さになっている。年配で腰が悪い人などが大勢腰掛けていた。
私は最初あぐらをかいていたのだが、周りを見るとみんな正座をしている。
「正座しなきゃまずいかな」
そう思って、足を組み直した。わずか十秒で膝が痛くなった。果たしていつまで耐えられるか……。
十五人の僧が厳粛に入ってきて、最も年配に見えた高僧が祭壇の中央に座してお経を読み始めた。残りの十四人の僧は祭壇の周りを囲んで座している。よく見ると、各人の前に木の箱が用意されている。
「何だろう?」
いぶかしく思っていたら、やがて各僧が箱の蓋を開け始めた。中には細長い経典がぎっしり入っている。数えてみたら五十巻あった。(ページ5に続く)

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