民衆の憎悪の対象
張緑水を寵愛する燕山君は毎晩のように酒宴を開き、酒池肉林を繰り返した。
王の威光を利用して、張緑水も宮中でやりたい放題だった。倉庫の財宝を勝手に自分の部屋に運んだり、王家が抱える金で自分の派手な装身具をつくったりした。側近が止めるのも聞かず、張緑水は国家の富を私物化したのである。
燕山君と張緑水の浪費によって、朝鮮王朝は破産に近い状態となった。すると、燕山君は民衆に高い税金をかけ、高官たちの資産も没収しようとした。王を陰で動かす悪女として、張緑水は民衆や官僚たちから激しい憎悪を浴びるようになった。
彼女は誰の声にも耳を貸さなかった。王と虚飾に溺れた日々を過ごし、それが永遠に続くと錯覚していた。
しかし、暴君の悪政は長く続かなかった。1506年、国を憂えた高官たちがクーデターを起こして、燕山君は王位を追われて流罪となった。正妻だった慎氏(シンシ)は廃妃となり、その他に燕山君の取り巻きたちも処罰された。
張緑水は斬首となり、その遺体はしばらく市中にさらされた。その遺体に向かって多くの民衆が唾を吐いて石を投げたという。暴政のせいで生活が苦しくなった恨みを露骨にぶつけたのである。
死してもここまで憎まれた張緑水。今に至るまで汚名が消えることはなかった。
文=康 熙奉(カン ヒボン)
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