母は新潟県で生まれ育ち、7人兄弟の末っ子で親戚が多く、私が子供時代の夏休みは毎年新潟に行きました。母は3人の姉と仲が良いことから、私は多くのいとこと近くの公園、山、川、田んぼへ行って一日中遊びました。
大きな驚きと感動
あれから45年以上たった今でも片貝(小千谷市)のいとこの家に花火を見に行きます。
片貝は「三尺玉発祥の地」として知られる小さな町です。毎年9月9日と10日に片貝まつりが開催され、花火が打ち上げられます。
片貝まつりの花火は浅原神社への健康祈願、家内安全、誕生祝い、結婚祝い、成人や還暦祝い等、1人1人の願いを込めた奉納煙火です。
その願いを込められ奉納された花火は、打ち上げる前に短いコメントが放送されます。1発1発、素朴ですが愛情の込められた愉快なメッセージの放送が町内に届き、ほのぼのとした気分になります。
花火番付という新聞くらいの大きさのプログラムが有り、奉納した人の花火がうち上がる時間とメッセージが載っています。プログラムは片貝の住人の思い出として大切に保管しているようです。
日中には各町内の成人、高校生、中学生が各々の部に別れ、はっぴ姿で元気いっぱい山車を引き町内を回っています。
一番の目玉はやはり世界最大級とされる四尺玉です。
越後三大花火「川の長岡」「海の柏崎」そして浅原神社の裏手の山場でうち上がることから「山の片貝」と称されています。
とにかく山に反響する爆発音、衝撃波に圧倒されます。これは背後にある屏風状の山林と花火を見る位置より高い所に打ち上げ地点がある自然環境によるものらしいです。
四尺玉は直径約1m20cm 、重さ420kg 、5m越えの巨大打ち上げ筒で打ち上げ、上空800mまで一気に上昇、爆音後直径800mの大輪を咲かせます。
浅原神社の近くに建っている、いとこの家の2階のベランダは特等席ですので、職場の人、友人、知人が集まり、誰が誰だか分かりませんが30人くらいで持ち寄ったお酒、お料理で四尺玉打ち上げの10時がくるまで大宴会になります。
さすが米所とあり、日本酒はお酒のあまり飲めない私でも美味しいと思います。引き塩鮭、さざえ、あゆは絶品です。お赤飯は醤油味でお豆は甘く煮た金時豆なので、通常のお赤飯とは少し違いますが、私は大好きです。
テレビで観賞する花火大会はとても美しく楽しいです。けれども実際に見る四尺玉の花火は美しさの感動は勿論ですが、天からの力が込められたような、体の奥まで振動する衝撃波と爆音、そして空一面の火の大輪の花の迫力は、体験して初めて分かる大きな驚きと感動でした。
一瞬で消えてしまうけれど、一生心に残る花火の力は驚異的に思います。そして日本の花火の技術は本当に素晴らしいと思います。
今年開催は11月に延期ですが、開催されたらとても嬉しいです。
文・写真=海山 文美(みやま あゆみ)
生活エッセイスト。東京生まれ。動物の編みぐるみを中心とした編み物作家として活動しながら、ライフスタイル全般を見つめ直すエッセイストとして執筆中。生活に根付いた身近な出来事を書いています。趣味は植物鑑賞、テニス、水泳。