昨今ガーデニングを楽しむ人はますます増え、フラワーショップには沢山の人が植物を求めてやって来る。植物の美しい姿や香りに癒され、育てることに喜びを感じるからである。そして植物が好きな人は、広大な美しいガーデンを一人で作り上げた、ターシャ・テューダーのファンが多いと思うのだ。
人生に悔いがない
私は偶然行った展示会で、ターシャを知ることができた。展示場には素晴らしいイングリッシュガーデンを思わせる庭が作られ、色彩豊かな珍しい花が生き生きと咲き乱れていた。奥のほうにはターシャが描いた絵画が飾られていた。
絵本画家として１００冊以上の絵本が出版され、クリスマスカード等もアメリカでとても人気があるようである。ノスタルジックであたたかくやさしい色合い、子ども達や動物が自然の中で遊ぶ姿に、夢の中に迷い込んでしまったような気持ちになる。
ターシャ自信も田舎の家で動物と植物に囲まれ、不便でも自分が実感を持って使えるものを選びながら、自給自足的な暮らしを実現した。
野菜を育てたり乳しぼりをしたり、ジャムやロウソクやプレゼントする人形など手作りしていた。
「丁寧な暮らし｣は現代の私たちが見習うべきものがとても多い。
ターシャはこう言っている。
「『夢に向かって自信を持って進み 、思い描いた人生を生きようとするなら、思わぬ成功をするだろう』というソローの言葉は私の人生そのものです、と」
ターシャの生き方には一種の潔さを感じ、そして大成功をとげているのだ。
心が充たされれば、美しいものや素晴らしいものを次々と見いだせると教えているのだろうか？
夢のような生活を楽しみながら作り上げた絵本やガーデンは人々を楽しませる。知恵や示唆に富んだ言葉は感動を与えている。
晩年は「人生に悔いがないから死さえ怖いと思いません｣という言葉が残されている。自分の人生を十分まっとうできた、理想の言葉である。この潔さはすがすがしいスイレンの花のようだ。
ターシャ・テューダーが人々に愛される理由をもっと知りたくなり、ますます興味がわくのである。
文・写真＝海山 文美(みやま あゆみ)
生活エッセイスト。東京生まれ。動物の編みぐるみを中心とした編み物作家として活動しながら、ライフスタイル全般を見つめ直すエッセイストとして執筆中。生活に根付いた身近な出来事を書いています。趣味は植物鑑賞、テニス、水泳。
