「お母さん、その話はこの間も聞いたから」。なんとも冷たい言葉。そのひと言で話は終わってしまう。確かに話したような気がする。でも、もう少し聞いてほしい。少し話が変わっているかもしれないのだから。
話を聞く側もいろいろ
人はなぜ、同じ話を繰り返して話してしまうのか。皆がそうとは限らないが、面白そうなので少し考えてみた。
まず、誰にどの話をしたか、覚えきれないのでは、という考え方もあるようだ。
確かに私も、お腹が痛くなるほど笑った面白い話や、その日にあった衝撃的な事を、家族など近い人に話したり、友達にラインで話したりする。
面白くて誰かに話さずにはいられないのだ。そうするうちに、不幸にも私の話を二度三度聞かされる人が出てくるのだと思う。
まさに誰に話したか忘れてしまうのか……。いや、そうは思いたくないが自信がない。
面白い話を見つけた。
相手が、以前も話した内容をまた話し始めた場合、聞き手には、我慢しながら聞く人と、ノリで聞く人の2パターンがある、というのだ。
ノリで聞く人は、「今日は話を盛っているな」「オチに持っていってるな」「カッコイイ話にしているな」などと、分析しながら聞くとフレッシュな気分で聞ける、というのだ。
しかし、自分の話をこんな感じで聞かれたら、少しショックかもしれない。
でも、大抵の人は、「この間もその話は聞いたなぁ」と、思いながらも黙って真面目に聞いているのではないか、と思う。
結局はみんな優しいのだ。私の周りの人も相づちを打ちながら聞いてくれる。ありがたい。
そんなステキな人たちに、これからも私のつまらない話にお付き合いください、とお願いしたい。
文・写真=須坂のりこ(すざかのりこ)
生活エッセイスト。ものづくりの現場に携わり、手芸を中心に多彩に興味を広げており、特にファッション、クラフト、デザインについて発信を続けている。西村玲子さんのエッセイ&イラストが好き。大人の楽しみとは何か、をいつも考えながら暮らしている。