まさに「美人薄命」
恵まれた環境の中で育った許蘭雪軒は、美しい娘に成長した。当時の朝鮮王朝では、年頃になった娘は嫁に行かざるをえなかった。
しかし、彼女の夫となった金誠立(キム・ソンニプ)という男は情けない人物だった。勉強をしてもすぐに投げ出してしまうし、才能がある許蘭雪軒に嫉妬して妓生(キセン)のもとへ足しげく通い、朝帰りすることも度々だった。
2人の夫婦仲は最悪だった。こうした生活に心を痛めた許蘭雪軒は月を眺め寂しさを紛らわすように詩を作った。
つらい日々の中でも、彼女は娘と息子を授かった。いままでの寂しさから逃れて我が子を溺愛する許蘭雪軒。しかし、子供たちは幼くして亡くなり、彼女の悲しみは一層深くなった。
肉親の死がさらに続いた。実家では父と兄が立て続けに死んでしまった。生きる気力を失った許蘭雪軒は、わずか27歳でこの世を去った。
弟の許筠は姉の死を悲しみ、彼女の作った詩を集めた。その詩集は、いつしか中国大陸にまで伝わり、彼女の才能は大いに讃えられた。
現在も許蘭雪軒の詩は213編も残っており、江陵(カンヌン)にある許筠・許蘭雪軒記念館に大事に保管されている。